赤と黄と緑、ゴッホの基本的な色彩関係を示すもっとも典型的な作品の一つである。しかし、画風そのものは、アルル時代のゴッホ本来のものではない。
ゴーギャンのアルル滞在期に、ゴーギャンの画風にならって何点かの作品を描いた彼は、アルルの病院からの通院後にもそれを試みている。つまり,ゴーギャンのいう「抽象」を試みているのである。
ゴッホは,郵便配達夫ルーランの夫人をモデルとして《子守唄≫の5点のヴェルションを残した。最初のエスキスのみ,ゴーギャンの滞在中、悲劇の直前忙措かれ、5点は病気のあとに描かれた。悲劇のあとにおいても、依然としてゴッホがゴーギャンに対する敬愛を失っていなかったひとつの証拠でもあろう。しかし抽象そのものはゴッホの体質に合ったものではなく,何回かの試みののち捨てられることになる.
|