|
黒田はパリ在住の10年の間にルーブル美術館などで様々な作品を鑑賞したはずである。
特に宗教画や歴史画の大作など強いメッセージを発する作品に興味を持ったと思われる。
以前から群像によって構成される大画面の作品を制作したいと考えていたようだ。
それが下にある画像の『昔語り』である。
黒田が帰国直後、京都旅行をしたときの情景を描いたものだが、黒田の話によれば、たまたま訪れた静閑寺の門前で僧侶が『平家物語』を語っていたという、その時、何百年も前にタイムスリップしたような不思議な気分になり、その時の情景が忘れられないと語っている。
その話を時の文部大臣西園寺公望に話すと住友家に話が伝わり制作の以来と資金援助を受ける事となり、その後の2年間はこの作品の制作のために没頭した。
残念ながら、この作品は消失しており誰も原画を見ることは出来ない。しかしながらその習作やデッサンが多数残されており、それらから原画の様子をイメージすることは可能であると思う。
現存すれば日本美術界の宝になったはずである。
以下の習作はカンヴァスに油彩であるが全て『第一回白馬会』に出品している。
|
昔語り下絵 41.1x63.3cm
|
|
|
下絵左端の草刈娘 |
『平家物語』を語る僧 |
中央に立つ舞妓 |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
黒田清輝 1896年頃 30歳
作品「昔語り」を思考していた頃 |
|
|
|
|