この作品が描かれた1650年代後半、フェルメールはさまざまな様式や主題を探求していた。台所仕事をする女性は、ほかの作品には見られないがっしりした体格で描かれており、漆喰の落剥、釘、釘跡まで認められる無地の壁を背にしている。 細部まで克明に描かれた背景と前景のモニュメンタルに描かれた女性との対照性は、まことに見事だ。 床に置かれている足温器は、女性の貞節ややさしさを願う気持ちを表わすものであり、その後ろの壁に貼られたタイルにキューピッドが描かれていることも、それと関連している。 硬くなってしまったパンを小さく砕き牛乳と一緒に煮込んで食べる。 当時のオランダではどこにでもある当たり前の光景を描いているのだが、前掛けやテーブルのタオルに何気なく高価な青絵の具がふんだんに使われている。