ゴッホがアルルで見いだしたもっとも有名なモティーフの一つが,アングロワのはね橋である.アルルからプークに至る運河にかかるこの橋は,オランダのはね橋への郷愁を彼のなかによび起こしたにちがいない。そしておそらくそれ以上に,青い空と水,単純なはね橋の造型は,浮世絵風の明確さ,単純さを求めるゴッホにとって好個の題材となったにちがいない。
「この手紙の最初に、ちょっとしたデッサンを書き送りましたが,ぼくはいまその習作をなんとかものにしようとして夢中です.黄色い大きな太陽に照らし出されたはね橋の奇妙なシルエット上に、恋人たちをのせた馬車が町へ向かっている図です.ぼくは同じはね橋で洗濯女たちのいる習作をもこころみています」(エミール・ベルナールあての手紙)アルル時代のゴッホの古典的な成熟を示すもっともよい作例の一つだろう。
弟テオへの手紙
仕事に関しては、今日十五号の画布を描いて持ち帰った。小さな馬車が通っている跳橋で、青い空にその側面が浮んでいて、同じように青い川と、草がオレンジ色の土手にキャラコを着たいろんな色の帽子をかぶった洗濯女がかたまっているところだ。
それからもう一枚の風景も、やっぱり小さな素朴な橋と洗濯女だ。それと駅の近くのプラタンの並木道のもある。ここへ来てから描いた画は全部で十二点になる。
天気は変りやすい。よく空が曇って風が吹く、でも巴旦杏はみんな咲き始めた。結局、僕の絵がアンデパンダント展に出品されているのはとてもよかった。
注)アンデパンダント展とは、参加費を支払えば誰もが自由に出品参加できる無審査の公募展展のことで当時サロンに落選した画家たちが多く出品していた。
現在のアルルの跳ね橋
この作品はギャラリーアオキで購入できます。
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