システイーナ礼拝堂の天井画のほぼ中央に描かれた、「天地創造」の白眉というべき場面。おそらくこれほど知られていながら、これほど間近で見られない絵もないだろう。 何しろ頭上21mのところにあるのだから。 左側のアダムはまるで彫刻のような肉体をもち、顔と性器はあくまで小さい。右側の精霊たちを引き連れた神は貫禄十分、彫りの深い<顔だちと渦巻く髭は彫刻作品『モーセ』を思わせる。 このようなたくましい人体表現に比べ、背景はいかにも彫刻家らしくじつにあっさりしたもの。しかしこれは、ミケランジェロが天地創造を大元素(空気・火・水・土)の創造と見なし、土のちりから生まれたアダムの場面を「土」ととらえていたため、背景を単純な土の塊で表現したのだろう。 縦にいく筋も入っていたひびは修復によってふさがれ、今は見やすくなっている。