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有名西洋絵画の解説と紹介をするインターネット美術館です。

作品解説「世の栄光の終わり

バルデス・レアール(イタリア)1622〜1690

作品名:世の栄光の終わり
製作年:1671年
サイズ:270x216cm
技法 :油彩 キャンバス
所蔵 :サンタ・カリダー施療院
レアール 世の栄光の終わり
 ムリーリョと同世代の画家バルデス・レアールは、セピーリヤに生まれ、同地で修業後にスペイン南部コルドバで画業を始める。
 1656年にセピーリヤに戻ったものの、すでにムリーリョが圧倒的人気を誇っていたため、有力なパトロンを確保できなかった。1670年頃、レアールはムリーリョとともに、カリダー施療院聖堂の大規模な装飾を委託される。そこでレアールが措いたのが、この『世の栄光の終わり』と『束の間の命』の対幅であり、これこそレアールの真骨頂を示すものだ。

『世の栄光の終わり』の画面下には、横たわった司教の遣骸にウジがわき、奥には骸骨が散乱した凄惨な光景が措かれている。半円形の上部から突き出た聖痕のあるキリストの手には天秤。右の皿には「信仰」を表わすキリストの心臓や聖書、左の皿には「7つの大罪」を象徴する動物たちが乗り、それぞれ「以下ではない」「以上ではない」と書かれている。天国に行くには信仰が絶対条件であり、地獄に堕ちるには罪以上は必要ないことを示しているのだ。

 この世のはかなさを暗示する寓意画だが、主題より何よりもまず、あまりにむごたらしい光景に衝撃を受ける。ムリーリョの明に対してレアールは暗、陽に対して陰、美に対して醜といっていい。そのため民衆からは支持されず、貧困と病のうちに生涯を終えた。