みずからの故郷であり、ベラとの出会いの場でもあったヴイテブスク。シャガールは、革命期のロシア時代である1920年にこの地を去って以来、二度と戻ることはなかった。しかし彼は、生涯にわたり、ヴイテブスクの村をモティーフにしつづけたのである。 ユダヤ人であるシャガールは、このイデイッシュ文化(東方ユダヤ文化)の色濃い故郷のイメージを、みずからのルーツとして生涯捨てることはなかった。故郷からあまりにも遠く離れ、もう帰還することがかなわないかのように大地から切り離され、雪の降りしきる村の上空に二人は浮かぶ。