1488年に金細工師同業組合から、サン・マルコ教会内の同組合の守護聖人聖エリギウスを奉る祭壇のために注文された。長期にわたる修復を終えて、この大祭壇画がその頃のフィレンツェにおける傑作のひとつで、ボッティチェッリの成熟期の主要作品であると認められた。 画面が上下に二分劃されている構図はその頃にすればきわめて斬新なもので、上部には、円舞する天使に因まれ、金の後光を受けて聖母が神から冠を授かる場面が描かれており、下部には四人の聖人が描かれている。左から福音史家聖ヨハネ、聖アウグステイヌス、聖ヒエロニムスが書物を持って天上界の出来事を暗示しており、右端の聖人は聖エリギウスである。 画面全体から強烈な精神性が放たれていて、後年のさらに神秘的な諸作品の前兆を示すものとなっている。画中に描かれた柱で区分されている下の裾絵で、上の祭壇画のテーマが予告されている。 そこに描かれている聖人たちの物語の右端に、蹄鉄工の守車型人でもあった聖エリギウスが切断した馬の脚をつかんで悪魔を騙している場面が見られる。