本名:ジョヴァンニ・アントニオ・カナル ヴェネツィア共和国が歴史上誇った勢力は,商業的・軍事的目的のための海上の覇権に依存していた。
18世紀までにはこうした支配力は衰微していたが,共和国の過去の栄光は,この作品に措かれたような祝祭の折に象徴的に想起されたのである。
この祝典では,西暦998年のキリスト昇天察の日に勝ちとったとされるダルマティアとの海戦の勝利が記念されている。この祭りの間に,「プチントーロ」と呼
ばれる金色の儀式用ガレー船に乗ったヴェネツィア統領はリド島から外海へと漕ぎ出し,指輪を海に投げ入れる。この儀式はヴェネツィアとアドリア海との結婚ないし合一の象徴なのである。
12世紀には,和平調停の労に感謝してローマ教皇からヴェネツィア統領にひとつの指輪が贈られていた。
ステーファノ・コンテイの設計によるこのどっしりとしたプチントーロは,共和国の滅亡を間近にして,最後に建造されたものだった。
描かれた場面は,船がちょうどリド島から帰ってきたところである。明らかにカナレソトを引きつけたのは,明るいオレンジの旗をはためかすこの船の壮観さだった。美しさと派手さ,象徴性と物理的外観の直裁な楽しさを結びつけたこの作品は,おそらく都市ヴェネツィアの原型的な景観といってよい。
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