モディリアーニは33歳のとき、当時19歳の献身的な女性、ジャンヌ・エビュテルヌと出会い恋にちる。
この出会いをきっかけに、彼の作品はしだいに変化してゆく。エビュテルヌを描いた本作にみられるように、まず全体の色調が明るくなった。それは、自身も画家だったエビュテルヌからの影響ともいわれている。さらに線は細く、軽くなり、タッチ(筆触)も整ってきた。椅子の背もたれ同様簡潔な弧をつぎつぎとつなぎ合わせたようなエビュテルヌの輪郭は、かっちりしたリズムを刻んでいる。
愛する人を得たことが、自作を見つめ直すことにつながったのか。実際に周囲からの評価も高まりつつあった。
だがその一方でモディリアーニは酒・女・麻薬を断てず、最後は幼いころからの結核が、ボロボロのその体から命を奪う。成功を目前にした35歳の死。彼の後を迫ってエビュテルヌも2日後、アパートの6階から身を投げた。
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