シャガールの描く空には,不可視の想像力の王国に人間を取り次ぐ存在として,時おり天使が通り過ぎる。 この絵の「青い天使」は,キリスト教の「聖告」の図像を思わせる仕ぐさで,捧げ物のように置かれている壮麗な花束の前に身をかがめている。後景には,画架に向かって三日月を描いている画家がおり,横顔を見せながら宙を漂う人間も描かれている.つまるところ「青い天使」には,またしてもシャガールの楽天主義が表現されている。これと同じ時期に彼自身抱いていた切迫する危機の予感にもかかわらず,敢えて花々を描きつづけようというシャガールの意志の上に、それは表明されているのである。