西洋絵画美術館
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「ポール=マルリの洪水と小舟」

アルフレッド・シスレー  1876年 油彩 キャンバス  50.5x61.0cm
パリ オルセー美術館

Alfred Sisley

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シスレー ポール=マルりの洪水と小舟
 
 
 この作品は連作7点の内の1点であり,シスレーの最も有名な作品のグループに属している。それは1876年3月に制作された,水が氾濫するポール=マルリの埠頭岸をとらえた卓越した景観である。
彼は以前にも洪水を描いたことがあるが,なかでも≪ロジュ島への渡し船一洪水≫とこの≪ポール=マルリの洪水≫はともに1872年の制作である。
 マルリ=ル=ロワからポール=マルリへとカーブして坂をくだりジャン=ジョーレ通りとなる本街道は,川岸のパリ埠頭に直角にぶつかっている。この街道が川の近くにくると,片側に宿屋兼葡萄酒の店「ア・サン・ニコラス」が,もう片側には「黄金のライオン」がある。セーヌ川と道とを隔てている並木と同じく,この2軒ともまだ現存している。「黄金のライオン」を背にして,ここ,氾濫した水が打ち寄せる足もとに,シスレーは画架を立てた。7点の連作のうちの2点目であるこの作品を描くために。
 ポール=マルリを描いた作品のグループは,進行していく洪水のそれぞれ異なった瞬間を表現している。満滴水時から,水が引いた状態まで。1作目では,雨で空がどんより曇り,宿屋をとり囲んでいるビヤ樽の上の厚板材が人間の窮状を暗示している。2作目では,これらは姿を消して,シスレーはもう少し主題に近づくことができた。空は澄みわたり,木々は春に触れている。3作目では,正常な状態に戻り,大型四輪馬車がその埠頭沿いの道筋でふたたび仕事を再開した。連作というより,ほとんど映画フイルムのような続きの画面である。
主題の変化は,純粋に美学的な考慮によるよりも,目に見える時間の経過によってもたらされている。
 たとえ人間的なドラマがあっても,シスレーはその場面に対して無理な反応をせず,オリュンボスの神々に近い平静さを保った。空と水と反射の融合のなかに,人間と自然との均衡のなかに,シスレーは偉大さを達成したが,それをふたたび手に入れることはまれだった。
 
 

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