本名:ジョヴァンニ・アントニオ・カナル
カナレットの生涯の主題はヴェネツィアであったロンドンに滞在した10年間の作品を除けば、彼が描いたのは事実上ヴェネツィア以外になく、これほど詳細かつ広範にヴェネツィアを描いた画家は彼をおいてほかにない。
カナレソトのヴェネツィアへの対し方は、この都市のもつ忘れがたい美しさと不思議な魅力に圧倒された旅行者(のちのターナーもその1人だが)が示すような、劇的で感情的なものではなかった。
なにげない細部に対する愛着を示すカナレットの絵画には、より深く根ざした、より永続的な愛着、つまり生粋のヴェネツィア人としての愛着が示されている。
この作品はおそらく、カナレットの作品中、最も完成度の高い作品で、あらゆる種類の船が水上に群がり、貿易で繁栄する当時のヴェネツィアのようすを伝えている。
船にはヴェネツィアの旗だけでなく、デンマーク、イギリス、フランスの旗が翻っている。
この風景は、税関からの眺めと考えるのが妥当だが、地誌的には正確とはいえず、画面両側は、それぞれ別の視点から見たものである。カナレットの作品でも空間的な広がりをここまで感じさせるものはまれである。
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