パルミジャニーノ (イタリア 1503〜1540) 「長い首の聖母」1535年頃 油彩 板 216x132cm フィレンツエ ウフィッツイ美術館

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パルミジャニーノ 長い首の聖母


作者のパルミジャニーノは画家・建築家・著述家のヴァザーリに「天使のように美しい」と許されたとびきりの美青年だった。イタリア北部のパルマで生まれ、ローマで活躍を始めた3年あまり後に「ローマ劫掠」が勃発。活動の場をボローニヤへ、そして故郷のパルマへと移す。しかしパルマに戻ってからは錬金術に熱中し、身も心も収入もすべて費やしてしまうようになる。髪もひげも伸び放題になって、まるで別人と化した。そして37歳の若さで命を落としてしまった。

 本作はパルミジャニーノが他界する5年ほど前に描かれた。イタリア・マニエリスムのなかでももっとも優美な作品のひとつであると同時に、とても奇妙な絵でもある。プロポーションが長く引きのばされ、身をくねらせた、マニエリスム特有の人体。どこか非現実的な明暗となまめかしい色彩。両性具有的な天使たち、人物の魅惑的なまなざし。そして数々の奇妙な点が気にかかる。なぜ人物はこんなに左側に偏っているのか。幼児キリストは死体のようにみえるし、聖母の膝からずれ落ちそうだ。遠景は小さすぎるし、右下の巻物を捧げた人物は生きた人間なのか彫像なのかわからない。大きな円柱も謎めいている。よく見ると円柱の根元には列柱の影があるが、柱は1本しか措かれていない。キリストの右足の上には幽霊のような天使の顔がある。こうしたことから、本作は未完成という説もある。本作の意味するところは不明な点が多いが、円柱は聖母の象徴であり、天使が掲げる十字架の描かれた壷も聖母の純潔な子宮をたとえたものだという。

           
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