ピエロ・デッラ・フランチェスカ (イタリア 1415〜1492) 「キリストの鞭打ち」 1453年頃 テンペラ 板 58.3x81.5cm

西洋画美術館>>ルネサンス>>キリストの鞭打ち


フラ・アンジェリコの創作動機が神への信仰だとすれば、ピエロを創作に駆り立てたのは数学的秩序への信奉だといえるだろう。
ピエロは、イタリア中部のボルゴ・サンセポルクロに生まれ、20代前半のフィレンツェ滞在中に、遠近法への関心を深めたといわれている。
故郷を基盤としつつイタリア中部のウルビーノや北東部のフエラーラなどで活躍したピエロは、画家としてよりも遠近法研究家として知られていたようだ。
とはいえ、落ち着いた色調と澄んだ光の広がり、動きは少ないものの、かえってそれが厳粛な雰囲気を醸し出す人物像は、見る人の心をとらえて離さない神秘的な魅力を放っている。
この魅力を支えているのが、『キリストの鞭打ち』に見られるような、数学的な正確さに基づいた空間描写である。
左側の建物の中では、ローマ総督ピラトの前でキリストが鞭打ちの刑を受けている。
手前に立つ3人の人物が誰なのか、またこの絵の主題は何なのか、謎の多い作品だが、初期ルネサンス絵画が到達した遠近法的空間表現の完成形態であることは間違いない。
ピエロは、ウルピーノ公夫妻の肖像画などの小品でも優れた手腕を発揮した。生涯独身で、1942年に故郷で息を引き取ったが、市民たちの手で手厚く葬られたという。

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