カラヴァッジョ(イタリア 1571〜1610) 「キリストの埋葬」 1602年頃 油彩 カンヴァス 300x203cm ヴァチカン絵画館

西洋絵画美術館>>バロック>>キリストの埋葬                               Back


 カラヴァッジョは、一家がミラノ近郊の小村カラヴァッジョの出身だったので、それが通称となった。ミラノの工房で修業したあと、1593年頃にローマに出る。初期のころは精赦なリアリズムの静物画を得意とし、16世紀末にはローマの教会のために宗教画を制作するようになった。

ここで彼は、闇の中にスポットライトを当てて主要人物を浮かび上がらせる手法を編み出し、聖書の物語をドラマティックに表現することに成功。17世紀初頭には、新しい様式の担い手として注文が殺到する。

 ところが彼は、絵画に現実感をもたせようとするあまり宗教画の約束事を踏みはずしてしまい、教会から拒否されることも何度かあった。たとえば『聖母マリアの死』(160506年 パリ、ルーヴル美術館)では、聖母を理想的な姿で表わすべきところを現実の死体のように措いたり、低い身分の女性のように裸足で描いたりしたのだ。さらに、この鬼才はしばしば暴力事件を起こすほどの素行不良で、1606年にはとうとう殺人を犯して死刑を宣告されてしまう。イタリア南部のナポリ、地中海マルタ島へと逃避行を続け、教皇の恩赦を得るためローマに向かう途中、近くの海岸で死去。

  『キリストの埋葬』は、そんな波潤に富んだ画家の円熟期の傑作である。下から見上げるように描かれた仰角表現、暗闇から登場人物を浮かび上がらせる明暗対比、キリストの足を中心に人物たちの手や足が放射状に広がる動的な構図、キリストの足を抱える男の肘や画面下の墓石の角がこちらに突き出してくるような空間のダイナミズム‥‥‥。バロック絵画の醍醐味がこの1枚に凝縮されている。


              


Back