ニコラス・プッサン (フランス 1594〜1665) 「アルカディアの牧人たち」1639年頃 油彩 カンヴァス 85x121cm パリ ルーブル美術館

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アルカディアの牧人たち

 プッサンは、バロック期のローマで活躍したフランスの画家。フランス北部ノルマンディー地方に生まれ、パリに出てイタリアの古典美術を研究。30歳で念願のイタリア行きを果たし、以後人生の大半をイタリアで過ごした。当初はバロック的表現を特徴としたが、しだいに明断で安定した古典主義絵画へと移行。1640年に一時帰国し、国王首席画家の地位を与えられてルーヴル宮殿の装飾を任されたが、2年たらずでイタリアに戻る。しかし、プッサンの古典志向はフランスの若い画家たちを大いに刺激した。
 1640年代後半からは、背景として措かれていた風景表現を前面に押し出し、やはりローマを舞台に活躍したフランス人画家クロード・ロラン(160082)とともに「理想的風景画」を確立する。
 『アルカディアの牧人たち』はフランス帰国前に制作されたもの。アルカディアとはギリシャに実在する土地名だが、ローマ時代の詩人ウェルギリウス以来、牧人の理想郷と見なされていた。中央にある石垣は墓であり、2人の牧人が指差している部分にラテン語で「アルカディアにもわれあり」と刻まれている。「われ」とは死を指し、理想郷にも死は訪れるという中世以来の「死を思え」の教訓であり、生のはかなさを暗示する「ヴァニタス画(現世の虚栄を表現する絵画)」にも通じるものだ。だがこれを墓に眠る死者の言葉として、「われもかつてアルカディアにいた」と懐古的に読むこともできる。右端の人物の横顔や左のひざまずく男のポーズなどは、まるで古代彫刻のようだ。

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