ピーテル・パウル・ルーベンス (ベルギー 1577〜1640) 「レウキッポスの娘たちの略奪」1617年頃 油彩 カンヴァス 222x209cm アルテ・ピナコテーク

西洋絵画美術館>>バロック>>レウキッポスの娘たちの略奪



 バロック最大の巨匠といえば、フランドルの画家ルーベンスにとどめを刺す。豊潤な色彩、流麗な筆さばき、官能的な裸体表現もさることながら、外交官を務めるほどの高い教養と温厚な人柄で各国の王侯貴族をパトロンにつけ、生涯に1500点を超える作品を残したとされる。
 ルーベンスは、アントウェルペン(現在のベルギー)出身の両親が亡命していたドイツ西部のジーゲン生まれ。当時スペインの支配下にあったアントウェルペンは、商業で栄えたネーデルラント南部の中心都市だが、16世紀後半には宗教戦争に巻き込まれ、プロテスタントの「聖像破壊運動(イコノクラスム)」やオランダの独立戦争で荒廃していた。


 アントウェルペンでの画家修業を経て1600年にイタリアに渡り、古典美術から新しいバロック表現まで身につけ、帰国後ネーデルラント総督の宮廷画家に着任。荒廃した教会の祭壇画制作を一手に引き受け、またフランス、イギリス、スペインなどからの大量の注文をさばいていく。
 『レウキッボスの娘たちの略奪』は、ギリシャ神話の主神ゼウスと人間の王妃レダの間に生まれたカストルとポルックスの兄弟(のちに双子座になる)が、レウキッボス王の娘たちを妻にしようとさらってきた場面を描いた神話画。今ならさしずめ誘拐・婦女暴行事件だが、その現場を激しいポーズをとる男女2人ずつに馬2頭、愛の神キューピッド2人をひとかたまりにして、ほぼ正方形の画面ぎりぎりにおさめた構成力は見事というほかない。


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